提言 (二稿)
「人と人との交わりのなかから人間の尊厳性が輝く」
(東本願寺 同和学習テキスト「仏の名のもとに」より)
故Gさんの後を受けて「ハンセン病に関する懇談会委員」を引き継ぎ、2年になります。様々な回復者の方々との出会いがありました。それまでは講演を聞く不特定多数の一人であったのですが、直接語り合うご縁をいただいたのは、実に不思議なことでした。
まったく知らなかった視点から、わたし自身が学んできた真宗の教えを見直させられることが、何度もありました。
隔離政策の下、感謝して心静かに過ごすことが「お国のため」であるという慰安教化が療養所のなかで行われてきました。そうした教えのおかげで厳しい環境を生きることができたとおっしゃる方もいます。しかし、人間らしく生きることを剥奪する暴力(強制隔離、強制労働、強制堕胎)に対して抵抗することを阻み、多くの人々に悲劇をもたらし、血の涙を流させることになりました。現在も、「私さえ黙っていれば家族には迷惑はかからない」と療養所の中で生涯を終え、園内の納骨堂に入る方が何人もいらっしゃいます。故郷との絆を断ち切った隔離政策を、率先して支えた慰安教化がもたらした責任は、重大です。
それに対して、差別と偏見の只中から名告りを上げ、人間はだれもが生まれながらに尊いという信念の下に国に対する裁判を勝ち抜いた回復者の姿には圧倒されます。親鸞聖人が法難、流罪の只中で出遇われた浄土真宗は、同じように、抑圧された人々を勇気づけてくれる教えではなかったのでしょうか。富山藩合寺令による廃仏毀釈に抵抗した人々、米騒動に立ち上がった水橋、滑川、魚津の人々。郷土の真宗門徒たちのことが思われます。
ハンセン病問題に学ぶことは、私の信心を鏡に写すようなことだと思います。そして人間の絆を回復しようとする運動のなかで、私自身も様々な人々と交流し、つながりの大切さを実感し、そこからお互いの「いのち」の尊厳性に触れられるような気がしています。
差異 つながり そして、いのち ―孤独の闇から開かれた世界へー
ハンセン病問題に関するイベント紹介
3月4日~6日
「真宗大谷派第7回ハンセン病問題全国交流集会」
会場 高山別院 高山グリーンホテル
観光地高山での温かい交流会として計画されています。300人規模の参加者を目指しています。
4月18日
「ハンセン病に学ぶつどい」
会場 富山東別院
講師 金泰九さん(岡山県長島愛生園在住)
講演とパネルディスカッションにより、富山での里帰りの現状や療養所将来構想問題などについて学びます。富山出身の回復者にも参加を呼びかけています。
5月10~11日
第4回ハンセン病市民学会
会場 東京都多摩全生園
学生、教育者、ジャーナリスト、研究者、宗教者など、さまざまな市民が集まる全国大会です。延べ1000人規模の参加があります。首都圏市民の会のS氏(Z住職)が中心となり、開催に向けて尽力しています。
6月
ハンセン病訴訟勝訴7周年記念シンポジウム
会場 富山市民プラザ
富山の本願寺派、大谷派、医療関係者らによる、恒例のシンポジウムです。
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